「絵は、本当にわかりません。絵のほうが僕をどこかに連れていく。僕は、ただ描かされる。そのうち、こんなん出ましたんやけど、となる」――横尾忠則(2023年6月)
様々な手法と様式を駆使し、多岐にわたるテーマの絵画を生み出し続ける破格の画家・横尾忠則(1936-)。半世紀前の1972年のニューヨーク近代美術館での個展開催が示すように、その作品は早くから国際的に注目され、近年の国内では新作を含む大回顧展「GENKYO 横尾忠則展」(愛知県美術館・東京都現代美術館・大分県立美術館、2021-22年)、新作約100点による「横尾忠則 寒山百得」展(東京国立博物館・横尾忠則現代美術館、2023-24年)をとおして、息の長い驚異的な創造力が注目を集めています。
2023年春、からだの衰えに淡々と応じつつ、テーマも決めずに大きなキャンバスに向かううち、横尾の「連歌」ならぬ「連画」としての制作が始まります。和歌の上の句と下の句を複数人で分担して詠みあうのが連歌ですが、横尾は昨日の自作を他人の絵のように眺め、そこから今日の筆が導かれるままに描き、明日の自分=新たな他者に託して、思いもよらぬ世界がひらけるのを楽しんでいました。
この「連画」は、気づけば川の流れのなかにありました。遠い昔に郷里の川辺で同級生たちと撮った記念写真。そのイメージを起点に、横尾の筆は日々運ばれます。滝、あるいは水は横尾の作品の重要なモチーフの一つですが、いま、その絵画世界は悠然たる大河となって、観客の前に立ち現れるのです。さまざまなイメージが現れては消え、誰も見たことがないのになぜか懐かしくもある光景――生も死も等しく飲みこんで、「連画の河」は流れます。
150号を中心とする新作油彩画約60点に、関連作品やスケッチ等も加え、88歳の横尾忠則の現在をご紹介します。
様々な手法と様式を駆使し、多岐にわたるテーマの絵画を生み出し続ける破格の画家・横尾忠則(1936-)。半世紀前の1972年のニューヨーク近代美術館での個展開催が示すように、その作品は早くから国際的に注目され、近年の国内では新作を含む大回顧展「GENKYO 横尾忠則展」(愛知県美術館・東京都現代美術館・大分県立美術館、2021-22年)、新作約100点による「横尾忠則 寒山百得」展(東京国立博物館・横尾忠則現代美術館、2023-24年)をとおして、息の長い驚異的な創造力が注目を集めています。
2023年春、からだの衰えに淡々と応じつつ、テーマも決めずに大きなキャンバスに向かううち、横尾の「連歌」ならぬ「連画」としての制作が始まります。和歌の上の句と下の句を複数人で分担して詠みあうのが連歌ですが、横尾は昨日の自作を他人の絵のように眺め、そこから今日の筆が導かれるままに描き、明日の自分=新たな他者に託して、思いもよらぬ世界がひらけるのを楽しんでいました。
この「連画」は、気づけば川の流れのなかにありました。遠い昔に郷里の川辺で同級生たちと撮った記念写真。そのイメージを起点に、横尾の筆は日々運ばれます。滝、あるいは水は横尾の作品の重要なモチーフの一つですが、いま、その絵画世界は悠然たる大河となって、観客の前に立ち現れるのです。さまざまなイメージが現れては消え、誰も見たことがないのになぜか懐かしくもある光景――生も死も等しく飲みこんで、「連画の河」は流れます。
150号を中心とする新作油彩画約60点に、関連作品やスケッチ等も加え、88歳の横尾忠則の現在をご紹介します。