[カタログ/2008年発行]
-開催概要から-
建築とは何か−常に問い続ける建築家の近未来設計図
石山修武(いしやま・おさむ、1944 年生まれ)の建築は、私たちが普段目にする住宅やオフィスビルと同じような考え方では設計されていません。出世作となった《幻庵》(1975 年)では、通常は地中に埋めて下水管等に使用する工業用コルゲートパイプを躯体に転用し、また、吉田五十八賞を受賞した《伊豆の長八美術館》(1984 年)では、現代建築においては等閑視されていた左官の技術を蘇らせました。
その土地に固有の素材を活用するばかりでなく、通常は建築物に使わない資材を転用し、時には依頼者自身が建設作業を行うといった独自の設計方法は、社会状況との関わりのなかで建築を捉えなおし、その先にある可能性を見据えてきた結果ということができます。
[b]現代を微調整し、未来を提示する12 の物語[/b]
本展覧会では、完成させず、前の家の廃材を再利用しつつ、緩やかに建設作業を続けている自邸《世田谷村》、募金活動で建設資金を集め、少しずつレンガを積んで10年以上の歳月をかけて2006年に完成した《ひろしまハウス》を始め、近年手がけている12のプロジェクトを中心に、石山修武の活動を、模型、ドローイング、写真などでご紹介いたします。
一つの敷地のなかでエネルギーを自給自足するシステムや、大都市でのメディアセンターの建設構想など、今、石山修武は建築を通じてどのようなメッセージを発信しようとしているのでしょう。
また、建築家としては異色ともいえる版画作品も展示します。さらに、石山修武研究室の分室が展示室内に設けられ、その先のプロジェクトが皆様の前で日々展開してゆく予定です。ぜひご期待ください。
撮影:大谷一郎
目次〔建築がみる夢 カタログ篇〕
「頭書 あいさつにかえて―石山修武の思索の運動」酒井忠康
「ポートレイト 思想と工作―石山修武という建築家」鈴木博之
「建築がみる夢―石山修武と12の物語」解説:石山修武
「建築がみる夢」石山修武
ひろしまハウス
世田谷村
天の川・ざくろの小径計画
渡真利島 月光・TIDA計画
猪苗代鬼沼計画
農村ネットワーク計画
グアダラハラ計画
チリ建国200年祭計画
北京モルガンセンター計画
ミャンマー仏教文化センター計画
音の神殿計画
浅草計画
電脳化石神殿窟院群 銅版画
「エッセイⅠ 石山修武と私」柄谷行人
「都市の眼を通して建築をみる」サスキア・サッセン
「石山修武とヒューマニティの建築―プノンペンの《ひろしまハウス》」マリア・セシリア・ロスキアボ
「石山修武へのインタビュー」聞き手・構成:守安美栄
作品 解説:中谷礼仁
幻庵
伊豆の長八美術館
開拓者の家
リアス・アーク美術館
現代っ子ミュージアム
十勝ヘレン・ケラー記念塔
富士ヶ嶺観音堂
伊豆松崎町のまちづくり
唐桑臨海劇場
グランモール計画
「エッセイ2 石山修武の建築にみる夢と現実」野田尚稔
「年譜」編:野田尚稔
奥付〔建築がみる夢 カタログ篇〕
執筆:石山修武、鈴木博之、柄谷行人、中谷礼仁、サスキア・サッセン、マリア・セシリア・ロスキアボ、酒井忠康、野田尚稔、守安美栄
翻訳:渡辺洋、松下希和、スタンリー・N・アンダソン、パメラ・ミキ、石山友美
編集:世田谷美術館(野田尚稔、守安美栄)
編集協力:早稲田大学石山修武研究室、石山友美、高橋賢
デザイン:宗利淳一、齋藤久美子
発行:株式会社講談社 2008年6月28日
印刷:図書印刷株式会社
© Setagaya Art Museum 2008
All works by Osamu Ishiyama are © Osamu Ishiyama
目次〔建築がみる夢 物語篇〕
はじめに
第一章 カトマンズ盆地に平安は戻っていますか ひろしまハウスinプノンペン
第二章 老ヨットマンの夢 渡真利島 月光・TIDA計画
第三章 猪苗代湖の農園村 猪苗代鬼沼計画
第四章 ラテンアメリカのモバイル・シアター チリ 建国二〇〇年祭とグアダラハラ計画
間奏曲 老アヴァンギャルドとのコラボレーション 「砂時計とミイラ」計画
第五章 ジャズ喫茶ベイシーの物語 音の神殿計画
第六章 子供たちの城 天の川・ざくろの小径計画
第七章 私がケイタイを持たないワケ 世田谷村
第八章 花の観音様・パヴィリオン・山車 浅草計画
スケッチ・ギャラリー
奥付〔建築がみる夢 物語篇〕
著者:石山修武
発行:株式会社講談社 2008年6月28日
印刷:図書印刷株式会社
ブックデザイン:宗利淳一+斎藤久美子
目次〔建築がみる夢 会場記録篇〕
なし
奥付〔建築がみる夢 会場記録篇〕
編集:世田谷美術館(野田尚稔、守安美栄)
撮影:大谷一郎
デザイン:宗利淳一
印刷:三晃印刷株式会社
発行:世田谷美術館 ©2008
2008年8月17日発行
〔「建築がみる夢」展にあわせて刊行〕