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刊行物

『冒険王・横尾忠則』

[カタログ]

-開催概要から-

「ターザン映画」や「少年探偵団」、「アングラ演劇」や『平凡パンチ』を愛するすべての世代に贈る、横尾忠則の冒険絵巻!

 「冒険王」。アート界を走り続ける横尾忠則(1936年〜)に、これ以上ふさわしい称号はないだろう。1960〜70年代の鮮烈なグラフィック・デザイン、1980年代の“画家宣言”、昨今は“隠居宣言”のかたわら小説家デビューと、話題多きこの作家については今まで無数の展覧会が開かれてきた。だが意外にも、彼の「冒険」に正面から切り込んだものはない。<冒険王・横尾忠則>は、初公開の60年代グラフィック原画から、冒険的物語がテーマの最新作まで、およそ700点が全館に展開する“血沸き肉躍る”一大絵巻なのである。

 展覧会の構成も、冒険物語仕立てだ。事件を予感させる<Y字路>シリーズの近作に始まり、江戸川乱歩の「少年探偵団」、ジュール・ヴェルヌの『海底二万里』、「ターザン映画」などから生まれた作品が次々に登場する。都会の屋敷の地下室、洞窟、海底、密林は「僕の中ではすべてつながっている」と作家は言う。めくるめく「冒険」イメージの連鎖を楽しめる展開だ。と同時に、芸術の根源が宿る場としての“子ども”の世界も、ここで感得できるだろう。

 横尾忠則の「冒険」を語るのであれば、イメージを創造する“方法論上の冒険”は外せない。その意味での最大の見どころは、1960〜70年代の貴重なグラフィック原画だ。作家から預かった1300点におよぶ資料の調査を行い、約500点を精選。その大半が初公開である。『平凡パンチ』や『話の特集』を飾った数々のイラスト、寺山修司や唐十郎、土方巽のアングラ演劇・舞踏のポスター、それらの原画や印刷指定紙からは、若き横尾忠則の大胆不敵でいて驚くほど緻密な仕事ぶりを堪能できる。

 横尾忠則の注目作・代表作を一望する「夢」・「コラージュ」などのコーナーを経て、作家が「人口庭園」ともよぶ最新作、極彩色の<Y字路温泉>が最後を飾る。毒々しく懐かしい、なのに全く未知の、眩暈がするようなシリーズだ。アート界の「冒険王」、横尾忠則はどこまで行くのか? そのゆくえを、本展でじっくり占っていただきたい。

目次

「食べたり、感電したりできる絵のこと、そして「冒険の思想」についても、すこしだけ。」荒俣宏

「視覚の鏡―Y氏への手紙」酒井忠康



図版

第1章 予感/選択

「コラム Y字路の姿かたち」山崎均

第2章 旅のはじまり

「コラム 夢とうつつの星の下―横尾忠則の子どもたち」塚田美紀

第3章 少年は冒険を好む

「コラム 〈絵物語〉に胸躍らせたもの同士として」根本圭助

「コラム 世界に開かれた窓―エッツェル版〈驚異の旅〉の挿絵をめぐって」石橋正孝

第4章 冒険の時代 横尾忠則1960~70年代の仕事

「コラム いろいろ思い出すね」和田誠

「コラム 横尾忠則と演劇ポスターの熱い時代」扇田昭彦

「コラム 極私的60年代回想―横尾忠則の一受容者として」越智裕二郎

第5章 創造の冒険 夢・コラージュ・反復・ルソー・名画

第6章 戦士の休息

「コラム 横尾忠則と動物」岡本弘毅

第7章 冒険は終わらない

「コラム 横尾少年を魅了した二つの小説」堀江あき子

「コラム バローズのターザン、映画のターザン、横尾のターザン」出原均

横尾忠則「冒険」をめぐるロング・インタビュー

作品リスト



奥付

編集:高橋直裕、塚田美紀(世田谷美術館学芸員)、岡本弘毅、出原均(兵庫県立美術館学芸員)

翻訳:クリストファー・スティヴンズ

デザイン:工藤強勝、渡辺和音(デザイン実験室)

印刷・製本:凸版印刷株式会社

制作・発行:株式会社国書刊行会

担当:清水範之、永島成郎

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