[カタログ/2008年発行]
-開催概要から-
絵画から空間へ―環境と記憶に捧げられた、平和へのメッセージ
ダニ・カラヴァン(Dani KARAVAN、1930年イスラエル生まれ)は、比類ない規模の環境彫刻(周囲の環境との調和を図るような大規模の立体作品)を手がけてきた稀有な芸術家として、世界的にその名を知られています。建国前のイスラエルの地に生まれ、フィレンツェやパリで絵画とフレスコ画を学び、マーサ・グレアム、ジャン・カルロ・メノッティらの舞台美術を担当。そしてイサム・ノグチやブランクーシ、ジャコメッティに多大な啓示を受けて環境彫刻へとその表現を展開し、ヴェネツィア・ビエンナーレ(第38回)やドクメンタ(第6回と第8回)に参加、その国際的評価を確実なものにしました。その後イスラエル国内はもとより、世界各地で様々な依頼による環境彫刻を実現し、今なお多数のプロジェクトを精力的に進めています。
一方でカラヴァンの日本への関心は非常に高く、国内に恒久設置された作品も少なくありません。札幌芸術の森(北海道札幌市)や霧島アートの森(鹿児島県霧島市)などに加え、2006年秋には室生山上公園芸術の森(奈良県室生市)がグランド・オープンし、これらはいずれも、その土地ならではの自然や歴史/記憶などに基づいた壮大な作品であり、彼の新たな展開として大いに注目されています。
[b]展覧会のみどころ[/b]
本展は、テル・アヴィヴ美術館(イスラエル)とマルティン・グロピウス・バウ(ドイツ)の協力のもとに企画された国際巡回展です。カラヴァン自らが会場デザインを手がけ、世界初公開となる初期の油彩画や挿絵、壁画や舞台美術の資料に始まり、レリーフや彫刻を経て環境彫刻へと至るその軌跡を、映像や資料を交えて展示することにより、この環境彫刻家の広大な活動の軌跡を回顧します。そして、豊かな緑に囲まれた当館展示室のために特別に考案される扇形展示室でのインスタレーションは、今なお第一線で活躍し続ける作家の新たな表現に触れる、貴重な機会となるでしょう。
目次〔ダニ・カラヴァン展〕
「道程への思索」ダニ・カラヴァン
「ダニ・カラヴァンの仕事―その初期と後期」モルデハイ・オメル(テル・アヴィヴ美術館館長)
「ダニ・カラヴァンと日本」酒井忠康(世田谷美術館館長)
第一章 絵画/挿画/グラフィック
「初期作品―素描、絵画、イラスト」ヴァルダ・シュタインラウフ(テル・アヴィヴ美術館特別展キュレーター)
第二章 舞台美術
「ダニ・カラヴァンの舞台美術 一九六〇-一九八三」シモン・レヴィ=アリ(テル・アヴィヴ大学中央図書館イスラエル舞台芸術資料センター館長)
第三章 壁画/彫刻/レリーフ
「平和の原理へと向かう足跡―絵画から環境造形へ」野中明(長崎県美術館学芸員)
第四章 環境彫刻/インスタレーション
「パブリック・コミッション―ダニ・カラヴァンによるサイト・スペシフィックな環境芸術」クリストフ・ブロックハウス(ヴィルヘルム・レームブルック美術館館長)
「描かれた空間と模られた絵画、メディアとしての空間―ダニ・カラヴァンのインスタレーションについて」髙嶋雄一郎(世田谷美術館学芸員)
ダニ・カラヴァンの仕事
年譜
主要参考文献
英文データ
奥付〔ダニ・カラヴァン展〕
監修:酒井忠康
編集:髙嶋雄一郎、野中明、清水裕子、石崎尚
執筆:ダニ・カラヴァン、モルデハイ・オメル、クリストフ・ブロックハウス、ヴァルダ・シュタインラウフ、シモン・レヴィ=アリ、酒井忠康、野中明、髙嶋雄一郎
翻訳:清水裕子、野中明、石崎尚、髙島雄一郎
アートディレクション:加藤賢策(東京ピストル)
デザイン:加藤賢策、大西隆介、内川たくや(東京ピストル)
校正:高橋賢、並木智子
制作:株式会社フクイン
発行:世田谷美術館、長崎県美術館、空間造形コンサルタント
©2008 世田谷美術館、長崎県美術館
目次 なし〔ダニ・カラヴァン展 展示記録集〕
奥付〔ダニ・カラヴァン展 展示記録集〕
主催:世田谷美術館
企画協力:空間造形コンサルタント
後援:世田谷区、世田谷区教育委員会、駐日イスラエル大使館
助成:芸術文化振興基金
協賛:財団法人材料科学技術振興財団
デザイン:加藤賢策(東京ピストル)
印刷:株式会社フクイン
発行:世田谷美術館
©2008 世田谷美術館