[カタログ/1991年発行]
-開催概要から-
このたび世田谷美術館は開館満5周年を迎えました。これを記念して、収蔵品による特別展「野生の復権」を開催いたします。
世田谷美術館は、「芸術と素朴」展で出発して以来“素朴”ということを大事にし、この基本理念に沿いながら、常に時代の美術動向を企画展と作品収集の両面に渡って、あるいはまたワーク・ショップなどの美術館活動のなかで取りあげてきました。そうしたなかで、素朴性を今一度見直す作家たちの間から何とはなしに、意図的に「野性の復権」を目指す動きが現れてきたのです。野性といってもただ乱暴で野卑ということではなく、知的に捏ね回されていない生地の本性(natures)を自覚しようという主張です。
イタリアのサンドロ・キア、フランチェスコ・クレメンテ、エンツォ・クッキ、ミンモ・パラディーノをはじめとして、ドイツのベンク、アンゼルモ・キーファー、アメリカのジャン=ミシェル・バスキア、たちに代表され、わが国でも横尾忠則、大竹伸朗などが呼応する興味深い作品を制作しています。
一方イギリスからは、アンソニー・カロ、フィリップ・キング、あたりから緩やかに流れ出し、デイビット・ナッシュ、アンディー・ゴールズワージー、ロジャー・アックリングの自然保護運動へとたどりつく新しい“自然派”の動きが紹介されます。これも同じタイトルのもとに是非とも含まれるべき重要な動向です。今日人類が直面しているもっとも緊急な課題への、アーティストの側からの提言にほかなりません。
このように、本展に出品される23作家の絵画、彫刻、写真作品等32点は、その表現方法は大変に違っていても、等しく現代社会が深く抱えている問題を直視し、告発し、克服しようというそれぞれの逆説的豊饒に満ちているといえましょう。
世田谷美術館は、「芸術と素朴」展で出発して以来“素朴”ということを大事にし、この基本理念に沿いながら、常に時代の美術動向を企画展と作品収集の両面に渡って、あるいはまたワーク・ショップなどの美術館活動のなかで取りあげてきました。そうしたなかで、素朴性を今一度見直す作家たちの間から何とはなしに、意図的に「野性の復権」を目指す動きが現れてきたのです。野性といってもただ乱暴で野卑ということではなく、知的に捏ね回されていない生地の本性(natures)を自覚しようという主張です。
イタリアのサンドロ・キア、フランチェスコ・クレメンテ、エンツォ・クッキ、ミンモ・パラディーノをはじめとして、ドイツのベンク、アンゼルモ・キーファー、アメリカのジャン=ミシェル・バスキア、たちに代表され、わが国でも横尾忠則、大竹伸朗などが呼応する興味深い作品を制作しています。
一方イギリスからは、アンソニー・カロ、フィリップ・キング、あたりから緩やかに流れ出し、デイビット・ナッシュ、アンディー・ゴールズワージー、ロジャー・アックリングの自然保護運動へとたどりつく新しい“自然派”の動きが紹介されます。これも同じタイトルのもとに是非とも含まれるべき重要な動向です。今日人類が直面しているもっとも緊急な課題への、アーティストの側からの提言にほかなりません。
このように、本展に出品される23作家の絵画、彫刻、写真作品等32点は、その表現方法は大変に違っていても、等しく現代社会が深く抱えている問題を直視し、告発し、克服しようというそれぞれの逆説的豊饒に満ちているといえましょう。
編集・発行:世田谷美術館