2023.10.21
土方久功 パラオ諸島などでの体験から生まれた創作
撮影:上野則宏
世田谷美術館では現在「土方久功と柚木沙弥郎――熱き体験と創作の愉しみ」を開催中です。今回のセタビブログでは、土方久功(1900-1977)を取り上げます。柚木沙弥郎については既にブログがアップされていますので、
こちらからご覧ください。
土方久功は、東京美術学校(現・東京藝術大学)で彫刻を学んだ後、28歳から約13年もの間、パラオ諸島や、サタワル島という、カロリン諸島にある小さな島で暮らしました。もともと民族学や考古学に関心があったという土方は、現地の人々と暮らしながら作品の制作に励み、民族誌学的な調査も行いました。
本展では、当館の収蔵品から、パラオ諸島滞在中に手がけた《マスク》のほか、不思議な生き物をあらわした彫刻や、現地の手斧で木の板を彫ったレリーフなど、帰国後に世田谷区豪徳寺のアトリエで制作された作品をご紹介しています。
土方久功《マスク》1929-1949年、世田谷美術館…
土方久功《二人(間の抜けた闘争)》1956年、世田谷…
撮影:上野則宏
これらの収蔵品に加え、今回、ご注目頂きたいのが童話の挿絵原画です。土方は『ぶたぶたくんのおかいもの』(1970年、福音館書店刊)をはじめ複数の絵本を出版し、福音館書店から刊行されている雑誌『母の友』にも童話の数々を寄稿しました。『母の友』には、絵本と同様「ぶたぶたくん」が登場するおはなしや、サタワル島の民話などが掲載されています。本展では、初公開となる『母の友』の挿絵原画の数々を展示しています。
『母の友』第254号(福音館書店、1974年7月)「…
「ぶたぶたくん」は、土方が戦後しばらく同居していた幼い姪との生活から生まれました。寝かしつける時に動物の鳴き声や動作を擬人化した即興の物語を聞かせており、最も喜ばれたのが「ぶたぶたくん」のおはなしだったそうです。童話の文章や挿絵には、子ども好きだったという土方のユーモアあふれる表現力が発揮されています。
展覧会は11月5日(日)まで。砧公園のお散歩も心地良い季節になりましたので、ぜひお越しください。
M.H
投稿者:M.H
2023.10.21 - 10:00 AM