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現在開催中の企画展「エドワード・スタイケン写真展」。4月7日までの会期も残すところあとわずかとなりました。
本展は、スタイケンがコンデ・ナスト社の主任写真家として撮影したファッション写真やポートレートの仕事を一堂にご紹介するものです。しかしスタイケンといえば、こうした商業写真界における成功もさることながら、若き日に傾倒した絵画主義的な写真作品や、後年、ニューヨーク近代美術館(MoMA)に写真部門長として迎えられてからのキュレーターとしての活躍についても広く知られるところです。後者の功績として最もよく知られるのは「ザ・ファミリー・オブ・マン(The Family of Man)」展の企画でしょう。アーヴィング・ペンやアンリ・カルティエ=ブレッソンらを含む、273か国の写真家たちによる503点の写真により人間の普遍的な営みをテーマに構成した展覧会は、1955年のMoMAでの開催を皮切りに8年間をかけて世界各国を巡回しました。
今回、展示室を出てすぐのスペースに、この「ザ・ファミリー・オブ・マン」展が日本巡回し、1956年に日本橋髙島屋で開催された際の展示風景をスライドショーでご覧頂けるコーナーをご用意しました。(*1) そこにはいま「写真展」と聞いて即座にわたしたちが頭に思い浮かべるような、額装された写真が壁面に整然と並ぶすがたではなく、空間を生かして大小さまざまなパネルを配しドラマティックな演出を試みた当時の展示の様子を垣間見ることができます。額縁のなかを覗き込むのではなく、人間の生のダイナミズムやある世界観そのものを、写真というメディアを通して体現しようと試みたのでしょうか。スタイケンの70代半ばにしてなお尽きぬ、写真の可能性をめぐるあくなき探求のありようをそこに見ることもできるでしょう。実行委員には木村伊兵衛や石元泰博らが名を連ね、会場構成は丹下健三が行ったこの日本巡回展。戦後約11年を経た57年前の東京で、人々はどのような気持ちでこの展覧会に足を運び、その空間を体験したのでしょうか。
展示室最後のコーナーでは、スタイケンのサインが入れられ、同じく同展実行委員でプリント制作にも携わった写真家・渡辺義雄に献本されたMoMAのハードカバー版カタログ(*2)を含めた貴重な資料も展示しています。また2階のライブラリーでは、開催後38年を経て刊行された写真集『人間家族』(冨山房、1994年)を実際に手にとってご覧いただくこともできます。
展覧会をまだご覧になっていない方、見たけれども資料は見逃したという方も、この機会にぜひ会場へお出かけください。
※1会場記録写真は髙島屋史料館よりご提供いただきました
※2 資料は松本徳彦氏のご厚意により拝借、展示させて頂いております