Ars cum natura ad salutem conspirat

みれば、みえてくる。


開催中の展覧会「宮本三郎のデッサン教室」も、

残すところあと3週間となりました。

今日はこの展覧会を皆勤賞のペースでみにきてくれている、

ちいさなお客さんの話をしましょう。

彼は小学1年生。

平日は大きなランドセルをしょって、

お友達と一緒に立ち寄ります。

休日はひとりで、いつもよりすこしかしこまって、

展示をみたいといいます(休日は小学生は無料なのです)。


あっという間に見おわって、

あっという間に帰っていきます。


だけれどまた、

次のお休みにはやってきて、

展示をみたいといいます。


あるときスタッフが、「絵は好き?」と聞いたら、

好き。と答えてまたあっという間に帰っていったそうです。


きっとそのとおりなのでしょう。

なんで?

どうして?

そういうことはあとまわしにして、好きなのでしょう。


わたしはといえば、

難しい顔をして、眉間にしわをよせて、

何か答えを、理由を、意味を、

と考えながらみることが普通になってきてしまいました。


今期の展覧会、展示室を入ってすぐ宮本三郎の言葉があります。


「よくみるということが大切である。

だが、よくみるということは、なにもこまかく細部を注意してみるということではない。全体をみるということであり、全体を比較することであり その細部にとらわれないで単純な大きな様相をつかむことである。」

(宮本三郎「デッサンの用具と使い方」『人物の描き方』美術出版社、1959年)


これはデッサンについて語られた言葉ですが、

いろいろなことに通じる深さを感じます。

そして今のところわたしより彼のほうがずっと、

この言葉を理解できていると思うのです。

さすが、皆勤賞。



■「宮本三郎のデッサン教室」開催中~3月20日(水祝)

10時から18時までご覧いただけます(入館は17:30まで)


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