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こどもたちが教室で覗いている箱の中身は何だと思いますか?
答えは、「山月記」などの著作で知られる中島敦が、赴任先の南洋の島パラオから東京の世田谷でお留守番をしている息子・桓(たけし)くんへ送ったパラオの風景などが写っている絵葉書のコピー(表裏をコピーして貼り合わせてあるので、本物そっくり!)や手紙、そして南洋の貝がらなどです。
現在当館で開催中の「パラオ-ふたつの人生 鬼才・中島敦と日本のゴーギャン・土方久功」展では、世田谷区内の小学校4年生のこどもたちが、鑑賞教室というプログラムで展覧会を見に来ます。希望する学校には、美術館に来館する前に、展覧会をより興味を持って鑑賞してもらうための出張授業を行っています。今回の展覧会でも5種類の授業を10校で行います。その一つが、中島敦の息子へ宛てた手紙の文面から、パラオがどんなところか想像してみるという授業なのです。中島敦は1941年の7月から約7ヶ月ほどパラオに南洋庁の国語編修書記として滞在していました。箱は、中島敦がパラオから息子へ送った小包という設定です。
中島が息子に宛てた絵葉書や手紙には、パラオのさまざまな情景や生活の様子が記されています。
人間の頭の倍もある大きな果物の話や、イルカの群れに囲まれた話、アンデルセンのお話に出てくる海の不思議な生き物を食べた話など。小さなこどもが理解できるよう、父のいるパラオがどんなところで、どんな暮らしをしているか、優しい言葉で語りかけています。中島敦の人間味に触れられる貴重な資料でもあります。
さて、世田谷区立玉堤小学校のこどもたちも、桓くんのように日本からはるか離れた南洋の島について、中島敦の文章からさまざまな想像をめぐらせました。今回の授業ではそうしたイメージを絵地図に表してもらいました。いろいろな名前の島々が登場する地図や、郵便局や学校が描かれたもの、こうもりのいる洞窟が描かれたものなど、中島敦の絵葉書などを手がかりに、実にさまざまな絵地図ができ上がりました。