Ars cum natura ad salutem conspirat

もうひとつの展覧会-駒井哲郎ミニ回顧展


美術館に行くと、つい賑やかな企画展を見て、収蔵品展の方はまた今度でいいか・・などと思って、結局見損ねることってありませんか?本当は東京国立博物館だって、本館の収蔵品展示のほうが入場料だってずっと安くて、国宝もけっこう展示されているにもかかわらず、なぜか並んでしまうんですよね、平成館に・・・

さて、現在開催中の当館の収蔵品展「夢からの贈り物-ルオー、ルドン、長谷川潔、駒井哲郎」も、実はとても充実した内容の展覧会なのです。

なぜなら今回の収蔵品展は、銅版画家・駒井哲郎の最初期から最晩年の作品まで、約60点の作品を一堂に会して見られるまさにミニ回顧展でもあるのですから(しかも、展示は前期、後期に分かれているので、合計としては約120点)。

駒井哲郎以外にも、駒井哲郎に影響を与えたルドンや、長谷川潔の作品や、ルオーの珍しい試作段階の版画なども展示していますが、今回の駒井哲郎のように、一人の作家の足跡を網羅した作品がこれだけ揃うというのは、収蔵品でもなかなかあることではありません。

では、なぜ駒井哲郎の作品を、これだけ並べることが可能になったのか。それは福原義春氏(現・資生堂名誉会長)が、まとまったコレクションを当館に寄託くださっているからです。もちろん駒井哲郎は世田谷の在住作家だったので、開館当初から当館でもブックワークを中心に収集をしていたのですが、福原氏の寄託作品が加わることで質、量ともに充実した、国内有数の駒井作品のコレクションになったのです。


 しかも今回の展覧会は、9月1日から始まる「福原信三と美術と資生堂展」とも連動しています。

(株)資生堂初代社長だった福原信三氏は、銀座に資生堂ギャラリーを開設し、美術作家たちの活動を支援したことでも知られていますが、駒井哲郎の初めての個展も、昭和28年1月に資生堂ギャラリーの前身である資生堂画廊で開催されました。今回の収蔵品展でも、その時に発表された《分割された顔》(9月30日まで展示)や、《月のたまもの》(10月2日~12月2日展示)といった作品を見ることができます。《分割された顔》は、当時《分割されたる自画像》として出品されたものです。モノクロの作品を発表し続けていた駒井哲郎が、作品として発表した最初の色彩銅版画の一つです。


収蔵品展「夢からの贈り物-ルオー、ルドン、長谷川潔、駒井哲郎」


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