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世田谷美術館では、今年度から企画展関連講演会のすべてに手話通訳がついています。手話通訳というのは、英語通訳などと比べて、馴染みのない方もまだ多いと思います。手話通訳は、通訳者が講演者の脇に立って、内容を聞き取り、同時に手話表現していくものです。手話という視覚言語を見るのは、聴覚だけの情報に加えてなにかもうひとつの表現を通して講演を味わうことができるようにも感じます。
現在開催中の「青山二郎の眼」展の関連講演会は、全部で3回行われました。おかげさまでどの講演会も好評を博し、多くのお客様にご来場いただきました。手話通訳は、世田谷区手話通訳派遣センターの方々にご協力いただきました。
青山二郎の多岐にわたる交友関係についての話題に興味が惹かれ、白州正子、小林秀雄をはじめ、大岡昇平、河上徹太郎、今日出海、中原中也、柳宗悦などそうそうたる名前が飛び交いました。A氏が「○○」と言って、それにB氏が「○○」と返した。すると今度はC氏が「○○」と口挟む。というような青山二郎を囲んでのエピソードなどでは、ひとりの通訳者が多様な表情を駆使して何役にも成り代わって通訳するわけですから、その空間表現たるや、あるひとつの身体表現の世界と言っても過言ではないと感心してしまいます。
まだ手話通訳を導入しはじめたばかりですが、より多くの方々に広くご活用いただきたいと願っております。