企画展


タイトル

利根山光人展−太陽と古代・そして永遠への憧憬

1995年5月27日~7月2日


 

 昨年4月、72歳で逝去した利根山光人は、メキシコあるいはドンキホーテシリーズといった色彩豊かな作品で知られています。しかし、その画家としての出発点には、暗澹とした絶望感と再生への希望とを同時に抱え込んだ終戦後間もない日本社会の混乱が背景としてあり、その時の体験は利根山光人の創作活動の重要な原動力として生涯消えることはありませんでした。「絶望と希望」はドンキホーテのモチーフに投影されるばかりではなく、メキシコの遺跡や日本の装飾古墳では「死と永遠」「死と生」という相対するものに姿を変えて繰り返し登場します。特に古代遺跡や古墳の壁画、洞窟画などに深い興味と関心を持ち、度々モチーフとして取り上げたことは「永遠なるもの」を残し得た物言わぬ古代人への憧憬と感動からだったといえましょう。人災天災を問わず破壊と再生を繰り返す歴史のなかで、変ること無く悠久の時を刻み続けた遺跡の中に、利根川光人は「永遠」を見出し、絶望や不安、死や破壊、滅亡といった不の存在を乗り越えようとしたのではないでしょうか。このことは灰燼と化した東京の残像を消し去ろうとする自分自身との戦いでもあったのです。戦後勃発した幾つもの美術団体のいずれにも加わることなく、独自の歩調で歩み続けた姿勢には、美術運動といったものとは一線を画し、こうした自らのメッセージを鈍化させまいとする強い意志を読み取ることができます。明朗な色彩に彩られた利根山光人の作品の背後には、常に「永遠」への希求と戦いとが激しく渦巻いているのです。
 本展は終戦間もない1948年に制作された「テアトル渋谷」をはじめとして、1950年代の読売アンデパンダン展の出品作から晩年のドンキホーテシリーズに至るまで約半世紀にわたる利根山光人の画業を、油絵、版画、素描など約100点によって回顧します。